令和7年3月上小阿仁村議会定例会の開会にあたり、村政の運営について、議員並びに村民の皆様に基本的な考え方を申し上げます。
石破茂内閣総理大臣が施政方針の中で、今や、我が国は、「人材希少社会」に入っています。
人材を大事にする社会づくりを国民一人ひとりの幸福実現のために、人中心の国づくりを進め、すべての人が幸せを実感できる、人を財産とする「人財尊重社会」を築いていく必要があると述べております。
加えて、食糧自給力、エネルギー自給率が低い現状では、外的な事象に国民生活が大きく影響を受けてしまう懸念があるので、より自立した形で国民生活を守るため、戦略的な国家運営が必要であるとも言っております。
村は、国の方針を尊重しながら、① 3年連続の豪雨災害の復旧と② 災害防止事業を推進し、③ 村の総合計画の策定を進めてまいります。
1つ目の災害復旧にあたっては、昨年の7月25日からの3年連続の豪雨災害において、私の携帯電話に国土交通省から何回も電話が入りました。
被害の規模が大きく、村には、技術職員がおりませんので、国からの職員派遣をお願いしました。
合わせて、秋田県からも来ていただき、毎日、20人近い技術職員が村の職員と一緒に災害現場と調査資料づくりに夜遅くまで対応していただきました。
その結果、約20億円という大きな被災報告となりました。
その後も県からの職員派遣によって、国の災害査定を終え、実施設計に基づく工事発注に向けて作業を進めております。
道路や河川、林道、水道施設や農地などについて、村民のため早急な災害復旧をしていくものです。

令和6年7月25日からの大雨による災害
2つ目の防災事業は、3年連続の豪雨となり、今後、毎年、地球温暖化による異常気象があるものとして、豪雨の対応をしてまいります。
災害の時、一番大切なことは、自分の命を守ることです。
いち早く、安全なうちに安全な所に逃げていただくことだと思っております。
2年前の7月15日からの豪雨時、萩形ダムからは、毎秒50トンの放流がされておりました。
しかし、太平山に降った雨は、あまりにも多く、秋田市側は、大災害となりました。
萩形ダムには、6倍以上の毎秒約300トンの水が流入しました。
そして、萩形ダムが満水になることから、ダムに入ってくる水をそのまま放流するという、これまで経験したことのない緊急放流が行われました。
これによって、村民は、緊急避難をすることとなり、避難所で一夜を明かしました。
もう一つのダムがあれば、洪水被害や緊急避難をすることもなかったと思っております。
災害時に困ったことは、食べ物や水、電気のない生活でした。
ごはんが食べれない、お風呂に入れない、トイレが使えない、テレビが見れない、冷房や暖房が使えないなどの不便な生活を村民のみなさんにさせてしまいました。
洪水を防ぐ効果の大きいダムと山林の整備は、水力発電によって、安定的にきれいな飲料水や農業用水を確保し、発電した電気を供給していくものです。
村の資源を活用して整備をすることで、自然エネルギーによる脱炭素化を推進し、企業の誘致や既存企業の支援につなげて、働く場の拡大と若者定住を図ってまいります。
ほんの60年位前の村は、萩形ダムや山林に関わる事業などによって、たいへんに賑わっておりました。
再び、賑わいを取り戻す防災ダムと山林整備、水力発電などの整備によって、村民の命と財産を守っていくものです。
3つ目の総合計画の策定については、全国的に人口が減少する中、村にたくさんあるものや村にしかないものを利活用することで、新しい事業展開をして、子どもを育てやすい環境にします。
村は、小水力発電可能性調査で10か所を調査し、4か所で発電の事業化が可能との報告を受けています。
また、全部の集落を対象に行政懇談会を開催し、貴重な提言をたくさんいただいております。
すぐに対応できるものは、事業化させていただきました。
今後、行政懇談会での提言や防災ダム、山林整備、水力発電などを総合計画に盛り込んで計画的に事業実施していくものです。

萩形ダム
総合計画は、三本の柱を基本方針にして策定します。
第1番目は、村民の健康です。
それは、健康で長生きしていただくことです。
そのために、病気や要介護にならないように、予防事業に力を入れてまいります。
また、病気や要介護になっている人には、治療とリハビリに支援をしていくものです。
そして、低所得世帯の支援です。
少ない収入から、税金や国民健康保険税、介護保険料などを支払っていただいております。
残ったお金で、衣類や食料品、光熱費などを支払っております。
物価高騰の社会状況に対応する生活支援に力を注いでまいります。
第2番目は、雇用の拡大です。
雇用の拡大については、防災ダムや山林の整備、水力発電の復活による化石エネルギーから自然エネルギーへの転換に向けて、村に眠っているたくさんの資源による既存事業の見直しや新しい事業によって、産業おこしをしてまいります。
そして、民間に大いに儲けていただき、最初に、従業員の賃金を上げていただき、社会貢献をしていただくことで、再び、事業者に利益が還元されると思っております。
もどってきた利益を設備投資に活用していただくことによって、村の産業経済は良好なものになると信じております。
村は、公共事業を発注し、民間でできることは、民間で対応して、事業検証しながら再び挑戦する商工業を側面から応援してまいります。
第3番目は、教育の充実です。
子供は、村の宝です。
村は、先人の教えを承継し、教育立村を提唱してまいりました。
子供は、保護者だけでなく、地域住民が一体となって育てていきます。
そして、子供は自ら育っていくものだと思っております。
むかし、村民が生活に苦しんでいた時、村は、木を切り学校を建てました。
この時、他の市町村からは、上小阿仁村は教育を大切にする村だと言われたそうです。
村の自慢は、子供たちです。
少数精鋭で他地域に挑戦していくものです。
そのための子育てや教育環境を他地域では享受できない最高のものにしていきます。
そして、学校教育だけでなく、社会教育や文化・スポーツ活動にいたるまで、だれでもが公平にやりたいことができるような環境整備をしていくものです。

育樹祭
この三本の柱を基本にこれから村の総合計画を策定し、村民が安心して長生きのできる村にするものです。
持続可能な村を作り、維持していくためには、自然にやさしい、人間にやさしい農業や、森林整備、社会教育活動や健康づくり、人づくりが重要であると思っております。
事業推進について、知識がなければ、知識のある人に教えてもらうことや、やれる人にお願いすることも大切だと思っております。
まず、やってみて、ダメだったら、なぜダメなのかを検証し、見直しをして、再度の挑戦をすることで、村は良くなると思っております。
議員並びに村民の皆様の力と知恵をお借りして、「利他の心で、情熱を持って、道徳を重んずる」、「人にやさしい、健康で安心して生活できる村」にしてまいります。
村のより良い将来のために、ご支援とご協力、そして、一緒に事業推進していただくことをお願い申し上げて、新年度の施政方針といたします。